強いだけじゃ勝てない

hamakorfc

2011年01月21日 10:44

是非、読んで欲しい本がある。




『関東学院大学 春口廣 強いだけじゃ勝てない』 松瀬学著 光文社新書 2005年


弱小だった関東学院大学ラグビー部を
大学選手権5回の優勝を誇る強豪校に作り上げた春口廣監督。

その指導の秘密、関東学院大学の強さの秘密が垣間見られる。
試行錯誤の中でチームのモチベーションをどう高めていくかがよく分かる。
個人の選手というよりは、チームスポーツの指導者に最適のバイブル。


逸話がある。「涙の雪かき」である。

決戦前日、東京に大雪が降った。
国立競技場は一面、真っ白い雪に覆われた。
ラグビー協会から、東京都内のホテルにいた春口のもとに”SOS”の電話がかかってきた。

「グラウンドの雪かきを手伝ってほしい」

当然だと思い、引き受けた。
 
春口は寮に残る控え部員に「午前集合」を伝えた。 

「俺に不平不満を持っている学生もいたと思う。
 ”雪かきに出ろ”って頭ごなしだから、いやいやだよな。
 最初は”なんで、俺たちが”なんだ。
 実は4年生は出ないんじゃないかと心配した」 

杞憂だった。
控え部員は国立競技場に飛んでいった。春口は胸を打たれた。

長靴もない。手袋もない。部員は素手でスコップを握り、一輪車を押していた。

「メイジの学生はまだいなかった。足はぐちゃぐちゃだよ。手も足も冷たいだろう。
 でも汗びっしょりになって、必死でレギュラーの舞台を準備したんだ」
 
特に反発グループのリーダー的存在だった4年生も遮二無二やっている。
練習では何度も怒鳴った男だった。春口はそれがうれしくて仕方なかった。

雪かきが終わる。
緑の芝生が現れた。

春口は「ありがとう」と、泥まみれ、汗まみれの控え選手に言おうとした。
そのとき、ずっと二軍以下でくすぶっていたその問題の4年生がぼそっと漏らした。

「俺、初めてチームの役に立ったよ」と。

もう、涙が止まらなくて・・・。

最後の試合にも出られなくて、ほんとうは悔しかっただろうにさ。
1本目のため、手を真っ赤にしてさ。一生懸命、雪かきしてくれたんだ。
 
試合前のロッカールーム。
春口は雪かきの件を選手に説明した。

キャプテン箕内は叫んだ。
 
「やるぞ!ゼッタイ、負けられない。
 俺たちはスタンドにいる部員たちを日本一にするんだ!」




この本を何度見ても熱いモノが込み上げてくる。

現役選手諸君にも、是非、読んで頂きたい1冊だ。

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